高校生になって、がむしゃらに突き進んでもうすぐ1年が経とうとしている。でも実感がない。まるで、エスカレーターに乗って、エスカレーターと同じ速さで逆走しているようだ。
春休みの初め、学校の合同合宿に行ってきた。はじめて、支援の先生や親、担任の先生がいない状態での合宿だった。電車に乗り、一時間ほど離れた湖の近くの集合場所へと向かう。
以前にも言ったかもしれないが、知らない場所ではよく体調を崩してしまう。前日、頭の中の混乱しそうな自分を、パンみたいにこねて一晩おいて熟成させた。そして、ルームメイトを信用して2日間をすごそうと考えて出発した。
自分たちの部屋のドアを開けると、全く知らない空気が僕に襲いかかってきた。部屋は馴染んだものが皆無だ。大いに異変だ。でも、その中で自分の世界を作ろうと努力することにした。
家族で旅行に行った時、ホテルで絶対に壊してはいけない自分たちの世界を作った。そのことを考えて布団を敷き、その近くにカバンやスマホ、薬を置くとすごく安心した。見ると、ルームメイトたちも布団のうえでそれぞれの世界をつくっている。
今回のルームメイトは、みんな友達だったので互いに助け合う、ということを言葉に出さずに約束した。けれど、何個かは諦めなくてはならなかった。それは、食事と入浴だ。
食事は、みんながぺちゃくちゃ喋っていると考えると、少し変な気持ちになってしまうが、その考えをしまって食べた。いろんな音がして、時々なんだかわからなくなりそうだったが、「ご飯が美味しい」、考えをそれだけにして、他のことは無かったことにした。
もう一つはお風呂だ。わたしは、他人が入ったお風呂には絶対に入りたくないと思った。なので、一番初めに入り、みんなが入ってきたらできるだけ空いている方へ行く。友達とお風呂に入るのは楽しかったが、他の子の物音と重なって、湿った空気の中で、私たちは一つの大きな塊になったようだった。しかし身体はきれいになり、休めることができた。
その後、ルームメイトたちとテレビを見て、それを話題に喋ったり、すこしふざけてみたり、机を使って一緒に勉強をしたりしていくのはとても楽しかった。
以前、オーストラリアでも、最初はとても不安だったが、行ってみると、ホストファミリーやバディたちが何をするのかを丁寧に説明してくれ、全力で楽しむことができた。そして、日本に帰るのが嫌になっていた。前回は海外だったが、今回は国内だ。
湖に散歩も行った。とても大きな湖で、わたしから見える部分はその湖のほんの一部だった。海にしか見えなかった。海にしては波が静かだった。大きい自然物を目の前にすると、人間はなんてちっぽけなんだろうと簡単に思ってしまう。わたしの悩みも不安も手のひらの上に乗るくらいの大きさだと考える。こんなに簡単に悩みを圧縮できるなら、大自然をいつも見ていたい。
一緒に散歩をした友達は、靴下で野球をしたり、スマホで湖を撮ったりしていた。和やかだなあと思う。知らない場所に行っても、友達がいれば慣れた場所のように過ごせるのだと楽しく感じた。
いつの間にか、一緒に過ごした部屋の空気の匂いがすごく安心できるものになっていた。あっという間の2泊三日で、気がついたら解散して、自分の家の中にテレポートしていた。
行く前の気持ちでは、永遠に続きそうな不安な時間であったが、仲間と一緒に走り切った。なんだ、できるじゃないか。自立っぽい自分に出会った。周りに言われてもいなかったけど、自分で背負って重く思っていた「自立しなさい」という言葉は、鉛のように曇って黒かった。それは今は磨いた鉄のようにキラキラ輝いて、僕の背中を支える軸になった感じがしている。
午後9:26 · 2025年3月24日 Twitter X