前編では、亜笠不文律さんの本棚がどんなものかを書いた。わたしはその本棚に操られ、動かされた。後編は著者としての体験を書く。
本屋さんで著者として挨拶するのは初めての体験であった。そう亜笠さんに言ったら「ほんとですか?」と返された。全然ない。本屋さんに行けば、自分の本を探してみる。あったら、棚を眺めて嬉しい気持ちになる。他の本を見る。わたしとお話ししてくれたことのある作家さんの本に出会うと、心の中で挨拶をする。わたしの本と並べたくなる。もちろんやらない。何らかの本を買って帰る。ふつうにお客さんである。
学校に行くと、わたしのロッカー、机、下駄箱がある。あんな感じだ。本が売れるとそれきりの場合と、また追加されている場合がある。置かれていたら良いなと思う。
本屋、亜笠不文律さんは、「『わたしは、あなたとわたしの区別がつかない』、積んでは消えてを繰り返すエッセイ本。(中略)KADOKAWAさんの在庫がある内にドカンと仕入れておくか。」とポストしてくれていた。これはわたしの本の居場所である椅子をくれたのだと考えた。
お店には、亜笠さんが選んだ本がきっと並んでいる。その中にわたしの本がある。オーディションに受かったような気持ちである。そして、夏に幼稚園の時の先生に会いに行った以来の「誰かに会いに行く」体験だ。「亜笠不文律さんの本棚に会いに行く」のである。
わたしは作者である。でも日常は高校生だ。時々、わたしを「作者」として出会ってくれる人がいる。サインを書いてと言われると、学校のプリントに名前を書くのと同じものを書く。異次元と、現実の間に挟まったような気持ちで書く。時々、自分の名前を間違う。どうにか何とか喜んでもらえないかと、絵をつける。

亜笠不文律さんに居る間中、わたしは異次元と、現実の間に挟まった気持ちのままだった。そうでなくても、自分の考えていることに、いつも自信がない。実は著者としてのわたしはまだあまり存在しない。
前編で書いた本棚の話は、亜笠不文律さんの一階だ。2階に言ってみたら、誰かの家に訪れたみたいな部屋だった。机と椅子と本があって、座って読むことができた。欲しい本があった。でもそれは売り物ではないようだった。

亜笠さんは、そこでお茶を出してくれた。栗の匂いのする紅茶だった。持ったら割れそうに薄いガラスの器にたっぷりと入っていた。飲んでみたら気持ちがとけた。家を出てから、ずっと息を止めていたと感じた。お茶を飲みながら、わたしはサインをした。見た人が少しでも楽しんでくれたら嬉しい。できるだけちゃんと著者になった。だから猫をできるだけたくさん書いた。

最後に、お客さんに戻る。欲しいと思った本を三冊買うことに決めた。御書印帖も頼んだ。本屋さんを回ると、それぞれの本屋さんに印を押してもらえるそうだ。春休みに本屋さんをまわりたい。
亜笠さんに挨拶をしてあとにした。振り返ると、亜笠さんがこちらに手を振ってくれていた。見えなくなるまで振ってくれた。行って迷惑ではなかったのだ。行ってよかったなと考えた。著者のわたしが手を振りかえした。
ここからはその後の話だ。わたしが持って行ったおまけはどうなったのかなと思っていた。誰もいらなくて、そのままだったら悲しい。そんなことを考えていたら、亜笠さんがお客さんの様子をポストしてくれた。驚くことに仕入れた本は全て売れていた。おまけもなくなっていた。とても嬉しかった。
そこで、わたしはおまけを追加したいと考えた。今回も手作りである。全部種類が違う16種類の絵柄のマグネットだ。サイズは画像を見て欲しい。本の上に載せて撮ったので、わかってもらえると思う。

最初の一個を作った時、ケースにヒビが入ってしまった。ショックだった。だからその一個はわたしのものにすることにした。もう一つは、イラストをカットするときに曲がって切れてしまった。だから、お店に渡すのは14個だ。
絵柄は、新たに書いたのと、前のが混ざっている。一つだけ、シークレットがある。それは何か書く。「わたしは、あなたとわたしの区別がつかない」を出版するとき、諸事情で掲載しなかった絵と文章がある。ようするにボツだ。その絵のうちの一枚を入れた。個人的に気に入っている。
亜笠不文律さんで、「わたしは、あなたとわたしの区別がつかない」を買ってくれた人。その中で欲しいと思ってくれた人に差し上げます。手作りなので、何か不具合があったらごめんなさい。もらってくれてありがとうございます。
他に、わたしが行ける範囲の本屋さんで、わたしの本の居場所があって。おまけが欲しいと思ってくれる本屋さんが他にもあるかなぁ。春休みに遊びに行きたいです。もちろんお客さんとしても本を買います。

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